
田淵行男は1905(明治38)年に鳥取県黒坂村(現・日野町)に生まれ、自然に恵まれた環境で育ちました。とりわけ蝶への関心は高く、少年期からカラーの図鑑を所望するのですが、当時の印刷技術では満足するものも無く、また、あったとしても高価なため、容易に手に入るものではありませんでした。手に入らなければ自分で描いてしまえ、とばかりに始めたのが蝶の細密画です。彼は、この細密画を、経文を写す「写経」になぞらえ、「写蝶」と呼んでいます。
チョウの美しさに魅せられ、「高山蝶」の研究をライフワークとしていた田淵行男。やがてその思いは、北海道・大雪山へと向かいます。1971年、66歳から始めた大雪山踏査は困難を極め、結果、7年間・通算20回の大雪行にまで及ぶのでした。