
田淵行男(1905~1989)は、日本のネイチャーフォトのパイオニアとして偉大な業績を残しました。その活動範囲は山岳写真から生態写真に及び、今なお自然写真分野における巨人として、高い評価とともに顕彰されています。
1945年7月、西穂高村牧(現安曇野市穂高牧)へ疎開した田淵は、高山蝶の研究や山岳写真の撮影を通して北アルプスと安曇野の自然を愛しつくしました。彼は大自然の中に身を沈めて、山の表情の刻々と移りゆくさまを見つめ多くの作品集を作成したのです。
田淵行男の中期の傑作である「山の時刻」「山の季節」「山の意匠」は「山の三部作」とも呼ばれる作品集です。これらは山に分け入らねば気づかない匂い・物音・落し物といったものにこだわり、山にかける情熱と山を通じて鍛え上げられた感性を余すことなく表現しています。ページをめくるたびに山の息吹を感じることができるこれらの作品集は、田淵が写真家としてデビューする前からこだわっていたプライベートアルバムの雰囲気とも共通しています。田淵が当初より目指していた作品集の完成形がここにあるのかもしれません。
「山岳写真家」と称される田淵ですが、自然現象により偶然現れた奇景や危険を顧みず登頂した山頂からの絶景といった、いわゆる「山岳写真」とは袂を分かち、独自の視点から山そのものを見つめた田淵独自の視線を感じてください。
北アルプスに抱かれた安曇野市は山岳都市と呼ぶことができます。田淵行男の視点から自然を見つめ、豊かな郷土を見直すきっかけになれば幸いです。
2.名 称
田淵行男記念館企画展「山の博物誌~田淵行男の視線~」
3.会 期
平成18年7月11日(火)~11月12日(日)