
田淵行男(1905-1989)は、木製カメラ・ガラス乾板の時代からカラーフイルムの時代まで、写真技術の変化を乗り越えながらも自身の写真への哲学を貫き、多くの傑作写真を撮影し、日本のネイチャーフォトを牽引しました。
今回の展覧会では、田淵行男のカラー写真に注目します。モノクロームの効果を多用した田淵の作品イメージから、カラー作品は少ないと思われていますが、そもそも、チョウをはじめとする昆虫の生態を研究することから写真の世界に入った彼には、待望の技術でもありました。彼がカラーフイルムの使用をためらったのは、カラー写真の技術と印刷技術がまだまだ発展途上であったからでした。田淵が感じた「山」そのものを表現する完璧な作品集を期待するには、それに耐えうる技術が不備な時代であったと言えます。
技術革新により撮影の技法は異なっていますが、写真界をめぐる騒擾をよそに、山は超然とそびえたっています。撮影機材と近景に写り込んだ人々の生活は移り変わっていますが、屹立する山々は泰然として、人々の小さな営みを見つめています。田淵行男の残したカラー写真から、機材の変化に惑わされない彼のスタイルを感じていただければ幸いです。
会 期 平成20年7月1日(火)〜10月19日(日)
観覧料 大人300(200)円・小中生200(100)円