
2006年12月29日
剣 五龍 鹿島槍 杓子 槍 奥穂 前穂
私のおろがみ仰ぐ七つの峰
清らかに 雄々しく おおらかに
美しき北アの鎮め 七つの峰
剣 五龍 鹿島槍 杓子 槍 奥穂 前穂
私の選ぶ七つの
うるわしく 神々しく たおやかに
そそり立つ七つの峰
剣 五龍 鹿島槍 杓子 槍 奥穂 前穂
私のたたえる七つの峰
端麗なる双耳の峰 鹿島槍
絢爛たる風化 五龍
壮絶なる崩壊 杓子
千古の岩塔 槍
先鋭なる飛将 前穂
高距を誇る盟主 奥穂
沈思の孤高 剣
祖国の大地を支えて立つ七つの峰
本土の中空に美しき弧線を掲げる七つの峰
2006年12月28日
シェンク ハスラー ベンド スイス名工の鍛えあげた三つの逸品
伝統に輝く本場生まれの三つの名作 私の信頼厚い山の三銃士
シェンク ハスラー ベンド 入山を前に私を悩ませる三本のピッケル
入山前の私を急き立てる三本のピッケル
美しい曲線に山恋の思いをこめて同行をせがむ三本のピッケル
鋭い切先に登攀の意欲を燃やして随行を迫る三本のピッケル
シェンク ハスラー ベンド 入山を前に私がくぐらねばならぬ供ぞろえの難関
山行を前に私がくださねばならぬ心傷む決断 シェンク ハスラー ベンド
私の親愛深い山の道伴れ 私の誇る本場生れの三銃士
私の四十年の山路の息づく三本のピッケル
私の四十年の山歴を支える シェンク ハスラー ベンド
2006年12月27日
八方尾根を上の樺まで下ってくると
ザラメ雪をバックに
揺れている黒い陽炎
岳悍馬の若木が
白い雪のカンバスに
黒のコンテで描く季節のパターン
八方池でやっと大地が黒い領地を広げている
白い国から解き放された安堵と一緒にザックを投げ出し
のどかな金属音を撒き散らしながらアイゼンをはずす
たっぷり水気を吸いこんだ山靴の先で
揺れている可憐な花影 ユキワリソウ
私はそのほのかな薄紅の花穂に見入って
怠惰な春山の午後に溺れていく
2006年12月10日
槍が蒼然と暮れてゆく
穂先だけに残照の紅をとどめて
その時 突然左の肩に白い光が走った
月だ
その日の満月は
左の稜線をはい登って
正しく頂上から沖天に躍り出した
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私の40年の山旅で巡りあった
最高の時刻
最上のショー
大自然の絶妙な演技に
心の中で拍手喝采を送りながら
私はシャッターを押しつづけた
その日
1966.7.31
その時
午後 7.14
その所
樅沢岳頂上
2006年12月05日
それから二年目
私は同じ季節に
同じ所に立った
石を並べた屋根は減っていた
黒土の匂も流れてこなかった
高原の春を彩る桃の木も見当らなかった
畑の中で私のカメラを見つめていた老爺の姿もなかった
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それから二年目
私は同じ季節に
同じ道を歩いた
真新しいトタン屋根の反射に目を射られながら
トラックの埃をひっきりなしに浴びて
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乗鞍山麓の春に
失われた構図
二度と戻ってこぬ
昔の季節
2006年11月30日
豊かな黒百合にかこまれた二重山稜の底
私の秘密な自然惑溺の砦
私の大切な自然観照の教室
無垢な自然が息づく
貴い山路の盲点
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だが そこで
私は可憐なパトロールに出会って辟易する
雷鳥親子の
懸命な凝視のまなざしと
ひたむきな講義の身構えに
私はたじろぎ とまどい
蒼惶とその場を去らねばならぬ
不遜な侵入者の自責と
招かれざる客の屈辱を浴びながら
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私の みのり豊かな道
私の 心労多き道
クロユリの季節
蝶・大滝の稜線
2006年11月29日
白々と
秋の陽がいっぱいの鉢ノ木峠
置き忘れたような小さな峠の小屋
抱きかかえてやりたいような峠の宿
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煙の匂いと かびの匂のよどんだ
小屋の中をひとまわりして
私はまた 秋の陽の中にもどった
今宵の宿をたしかめた安堵と
登りつめた喜びにひたりながら
白い 峠の砂に腰をおろす
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静かで
物悲しく
程よい寂寥に取りまかれた
峠の真昼時
誰も登ってこない
小さな峠の小屋に
快い虚脱の時刻だけが流れてゆく
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2006年11月28日
どこよりも早い朝がくる
どこよりも早く太陽を迎える
三角点が陽を浴びる
私のピッケルが陽に光る
石像も生き生きと浮かびあがる
そして
どこよりも高く
どこよりも早く
その日の時刻の中に立つ私
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だが
山頂は大地垂直のはて
陸地孤高の突端
極限の悲哀と孤独の棲家
運びあげた一つの希望を失い
新たに一つの希望を拾って
山頂を下る私
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2006年11月26日
磊磊とひろがる
花崗岩の海
白々とつづく
砂礫の斜面
行きあう人影もなく
初秋の陽が槍に傾く
横通尾根路
あかあかと夕陽を浴びて
朱と燃えるひとむら
いち早く季節を呼び
ひっそりと
秋の山路を飾る
季節のコサージ
紫紺の槍にかざす
ウラシマツツジ
2006年11月25日
薄墨色の雲が
ひとしきり霰をちらして通りすぎると
その下に飛騨の谷がのぞいた
曇り空の下にひろがる紅葉の谷は
暗く沈んでいた
だが
見覚えのある地形を見つけて
私のこころは明るかった
次第にとぎれてくる雲の上に
岳樺がおそい黄葉を散らしていた
落葉の上には霰がまだ残っていた
私はそんな雪道の初々しい美しさの中に
すぐには山靴が踏みだせなかった
とうに三時を過ぎていたが
鍋平はもうすぐのはずだったし
何度も立ちどまっては
初冬の山路に瞠目し
陶酔し
入念に足場を選りながらおりて行った